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【武豊】”先を見据えた騎乗”がもたらすこと

2015-03-11 [週刊大衆03月23日号]

人生に役立つ勝負師の作法 武豊
”先を見据えた騎乗”がもたらすこと


競馬は勝利至上主義――
なによりも、まず、勝つことが優先されます。
勝つためには、どう乗ればいいのか。道中、どこに位置し、どこでスパートをかけるのが一番いいのか……気がつくと、週末のレースのことを考えています。

しかし、勝つことと同時に、常に先を見据え、レースごとに課題を持って騎乗することもまた、騎手に課せられた使命のひとつだと思っています。
レース中、意識的に馬込みの中に入れ、我慢を覚えさせる。最後の直線、馬一頭分しかない隙間に鼻面をこじ入れる。
これ以上待ったら間に合わないというギリギリのタイミングまで、GOサインを出すのを待ってみるという場合もあります。

なぜ、そんなことをするのか!?
その馬が持っている能力はだいたいこのくらい……その思い込みが、結果として勝利を遠ざけるケースがあるからです。
もう、これ以上は無理というところからスパートしたときに見せるのが、その馬が持つ真の能力……もう一段上のギアというのは、そうやって引き出されていくものだからです。
2007年3月11日。阪神競馬場で行われた桜花賞トライアル、GⅡ「フィリーズレビュー」もそんなレースのひとつでした。
このレースで僕がパートナーを組んだのは、アストンマーチャン。顔はキュートで、馬体はグラマラスというアンバラスさが魅力の女の子でした。

このレース、アストンマーチャンは、単勝1.1倍の圧倒的な1番人気。道中、1つ2つの不利があっても、勝つということだけだったら、それほど難しいレースではありませんでした。
が、しかしです。僕がこのレースで意識したのは、レースには出走していない馬……前走のGⅠ「阪神ジュベナイルF」で、クビ差競り負けた、2歳女王、ウオッカの存在です。

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